第四章は、俳優について。
戯曲・演出・俳優の関係
うまい/へた
著者が俳優を採用する条件
- コンテクストを自在に広げられる
- 近いコンテクストを持っている
- 非常に不思議なコンテクストを持っている
コンテクスト(文脈)
一人ひとりの言葉の内容、言葉の範囲
文化の差異、歴史の差異、文化を基盤とした価値体系の差異がコンテクストの差異を生む
コンテクストのずれと摺り合わせ
俳優とは「他人が書いた言葉(=台詞)を、あたかも自分が話すがごとく話さなければならない職業」
舞台に上がる前段階の俳優の仕事
- 自分のコンテクストの範囲を認識すること
- 目標とするコンテクストの広さの範囲をある程度、明確にすること
- 目標とするコンテクストの広がりに向けて方法論を吟味し、トレーニングを積むこと(演劇の「様式」)
環境と言葉
「発語は常に、他者との関係において行われる」
俳優が台詞を発するための根拠
「新劇(西洋近代演劇の直輸入)」:心理、感情
アングラ・小劇場運動:肉体や無意識、情念や本能
ロゴスから、パトス、エロスへ
90年代以降:他社に対する意識、自己を取り巻く環境に対する意識
第五章 「参加する演劇」に向かって
「遠いイメージから入る」ことは、表現者と鑑賞者の間で、「内的対話によるコンテクストの擦り合わせ」のため
抑圧の強い共同体では、コンテクストの擦り合わせに時間をかけない
→学校教育の問題
「ここは美術館かもしれない」という主体的な合意が形成される前に、「美術館はいいなぁ」という台詞が発せられると、その台詞はリアルと感じられない
奉納歌に「返答する者(ヒュポクリテース)」→最古の俳優
古代ギリシャの人々は、対話の必要性を直感し、コンテクストの擦り合わせが社会を維持する方策だと思い至ったのでは
市民社会は、参加を前提とした演劇を要請する
民主政治と「演劇」「哲学」の関係
【感想】
古代ギリシャまで遡り、民主制が哲学とともに「演劇」を要求した、という解釈はスケールが大きくて感動した。学校と同じく、多くの大人が所属する企業もまた、抑圧の強い共同体である。コロナ禍で演劇の発表の場である舞台も減りつつあるのだろうが、国全体が抑圧を強めている中、それでいいのだろうか。