映画研究のための読書第一弾。
戯曲家の平田オリザ氏による『演劇入門』です。
リアルな台詞とは?
まずは著者から、問題提起がなされます。
リアルとは何か?
演劇における「リアル」は、必ずしも現実世界での「リアル」ではない。演劇における「リアル」とは?
話し言葉を書く行為は、戯曲家という極めて人数の少ない職業の中でのみ行われる。そのため、技術伝承が非効率で多くの人がやり方を知らない。
「チャット」でのやりとりは、直接会って話していれば起こらない可能性も。1998年の著作ですが、その後のLINEの隆盛やテレワークの普及を経た今、本質をとらえた内容だと痛感します。
近代演劇と現代演劇
テーマが先か、表現が先か
現代演劇では、「伝えたいこと」=テーマがなくなってしまっている。
- 脱イデオロギーの時代
- 芸術の社会的役割の変化
→単純な意味でのメディアやプロパガンダの手段ではない
表現の欲求=世界とは何か、人間とは何かという、私の内側にある混沌とした想いに、何らかの形を与えて外界に向けて示したいという衝動
歳を取るにつれて、日々の生活が当たり前になり、制御の意志が強くなる。それに待ったをかけ、ありのままに現前させるのが芸術であり、現代演劇である。
タブーを打ち破りらんとする強い衝動
著者の戯曲『火宅か修羅か』
人間の意識の最も小さな振幅の一つを描いたもの。ふだんは気づかない、または気がつかないふりをしている類の想い。
【感想】
第一章だけだが、もう面白い。時代の要請から演劇の役割が変わりつつ、変わらないものをしっかり捉えている。確かに、映画を観る時も微妙な表情の方が、ド派手なアクションより見どころだったりする。